人間固有のテクノロジーを活かす:川内原子力発電所再稼働に向けてのシナリオからの示唆

レスポンストレードの収益は、どれだけ筋肉質なシナリオを組み上げられるかにかかっている。

シナリオ組み立てフレームワークの構成要素において、とらえがたく、それでいて最も重要なものが未来の需給イメージである。


過去の積み上げからサプライズニュース翌日の需給を読むのは比較的容易である。

既に起こった事象の足し算引き算の世界なので、あとは必要な事象を過不足なく調べ上げ、事象のインパクトを経験則によって重み付けしていけば、自然と精度は引き上がる。

既存シナリオの存在とその影響を付け加えれば申し分ないだろう。


しかし、未来の需給はそう単純ではない。

未来は過去の単回帰直線からの外挿で予測できるような単純なものではないからだ。

過去の事象からいくら精緻に未来予測モデルを構築しても、わずかな前提が変化しただけで別のパラレルワールドに移行してしまう。


明日10日、川内原子力発電所で原子炉の核分裂反応を抑える制御棒の動作を確認する検査が実施される。

これで問題がなければ、翌11日、震災後初の原発の再稼働となる予定だ。


これまで再稼働に向けて、九州電力をはじめとする関連銘柄は強烈に株価を上昇させてきた。

ここにきて利益確定売りに押される形にはなっているが、チャートは依然25日移動平均に支持されて推移中している。

九州電力株価チャート

明日の検査はまず問題なく終了、11日の再稼働は揺るぎないと市場は見ているし、自分もその見立てでこれまでずっとポジションを取ってきた。


逆にその前提が崩れれば、積もりに積もった仮需達の阿鼻叫喚の世界に移行することは想像に難くない。

可能性が極小だが、起これば大損失を覚悟しなければならない、オプションの売りのようなポジションなのである。


未来の需給イメージの本命をしっかりと組み立てつつ、それでいて可能性の薄い別のパラレルワールドにまで想像を及ぼすことができるかどうか。

数理モデルだけでは完全に説明できない未来だからこそ、人間が介在する余地がある。

そしてそれこそが分厚い収益の源。


未来を想像し創造する、機械には持ち得ない人間固有のテクノロジー。

この最強のテクノロジーを放棄する、すなわち人間であることを放棄するシステムトレーダーには決してならないようにな。