お金が欲しければお金のことは考えるな:フリーミアム経済の希望(3)


フリーミアムとは、基本的なサービスや製品を無料で提供し、さらに高度な機能やオプションに対して課金する手法。

アトム(物質)はなかなか無料にはできないが、ビット(情報)は再生産コストがゼロであるため、このようなビジネスモデルが成立しやすい。


自分は現在、フリーのデータサイエンティストとして、とある企業が運営するソーシャルゲームのコンサルに入っている。

ソーシャルゲームは通常F2P(フリーツープレイ)を採用し、基本プレイ無料でガチャやアイテムで課金する。

かつてコンプガチャ問題で世間を賑わし、パズドラの大ヒットにより市民権を得た市場だ。


利幅の分厚さから数多くの企業が参入し過当競争になってはいるが、一定のDAU(1日当たりのログインユーザ数)を確保できれば、今でも収益性は高い。


ビジネスとして特徴的なのは、各種KPI(重要業績評価指標)をリアルタイムにチェックし、その状況に対応して迅速に施策を展開する運営方式にある。

まさにビッグデータの申し子のようなビジネスといえよう。


これにより人への価値の保蔵が可視化され、ひいてはいかなる施策がその価値を高めるのかまでモデル化でき、統計的な処理を可能とする。

施策と売り上げとの因果関係はクリアなため、システムトレードよりもはるかにモデル化しやすい。


とはいえ、同じ業界の方が読んでいればわかるかもしれないが、そこまで高度で筋肉質なデータドリブン運営をやれている企業はほとんどない。

そこに人材のエアポケットが存在し、自分の存在意義があるというわけだ。


統計的に人の心理をコントロールし、狙ったタイミングでマネタイズ、巨利を稼ぎ出す。

人に対してドライな側面がある一方、人への価値の保蔵とはいかなることかも同時に感じるられる仕事ではある。


人への価値の保蔵を困難にする最大の要因であった“人の心の移ろいやすさ”を可視化できる現代の最先端ビジネス。

実は個人の情報ビジネスも、規模は違えど同様の趨勢をたどっている。

そこにいかなる希望が見えてくるのだろうか。