労働市場のレジームを感知しスイッチする:現代の労働者のあるべき立ち回り方(2)

書籍:株価チャートの実践心理学 伊藤智洋

誰もが知る老舗ゲームメーカーでの、労働者としての自分の立ち回りを紹介しよう。

所属部署は、日本以外にも、主要拠点としてアメリカ、シンガポール、韓国などを含めると700名ほどの、かなり大きなスタジオ。

スタジオ内ではゲームタイトル自体に与えられる賞と個人に与えられる賞があり、自分は唯一の個人賞を、入社1年も経たずに受賞した。


ゲームメーカーの現場に在籍する人材の大半は、当然プログラマーとデザイナーになる。

著名な会社なので、たとえばデザイナーでいえば美大や専門学校の主席クラスが毎年入社してくる。


彼らはスキルのみではなく、個々人が働きやすい場の空気を一緒になって作ってくれたり、仕様書にない機能やデザインを能動的に提案をしてくれたりと、優秀なことこの上ない。

ゲームメーカーで働いた経験のない自分のつたない仕様書を、共に膝をつき合わせてブラッシュアップしてくれ、いつのまにか高品質な作品に仕上げてくれる。


学生時代もリーダーとして皆をひとつの目標に導いてきた数多くの経験があるのだろう。

迷いなき言動と自信に満ちあふれたその視線が雄弁に物語る。


体育の時間「2人でペアを組んでください。」と先生が号令をかけると、毎回必ずひとりあぶれるというコミュ障の宿命を背負って生きてきた自分の目には、まばゆすぎる青春を謳歌してきたであろう、そんな人材たちだ。


だが、彼らが経営層に評価される場面はついぞ見ることはなかった。

優秀な彼らは、今でもアウトプットの品質の高さこそが最大の評価軸だと信じて日夜長時間の労働に勤しんでいることだろう。


「労働の質×労働時間」が、いつか必ず給料に反映されるはずだと疑わずに。

学生時代に信奉させられてきた戦後レジームの変容に気づくことなく。