ゲーム制作の知識ゼロで転職して真っ先に取り組んだのは、部署内の状況観察と、このビジネスの本質を捉えることだった。
状況観察は、自分の固有性を活かした仕事を創出するため。
優秀な彼らと、95点、96点のレベルでしのぎを削っても勝ち目はない。
そうではなく、固有の仕事を創出し、60点のアウトプットでNo.1になることを目指す。
唯一無二の仕事なのでライバルはおらず、その仕事をコントロールできるのは自分1人のみ。
ゆえにNo.1、という論法。
当時、プログラマーとデザイナーしかいない、しかもディレクターやプロデューサーも生え抜きのため、そもそもマーケティングやデータドリブンの思考がゼロだということがわかった。
マーケティングとデータマイニングのスキルを備える自分の提案書のタイトルは必然的に決まった。
「KPI向上を目的とした業務改善のためのデータドリブンアプリ運営手法の導入」
次にビジネスの本質を見抜く。
ソーシャルゲームは99.9%の高純度情報経済ビジネスだ。
高額ガチャで手に入れたカードやキャラクターでさえ、運営会社のサーバーにビットデータとして記録されているに過ぎない。
では彼らはいったい、何にお金を支払っているのだろうか?
ズバリ「他者との差異がもたらす効用」に対して、である。
現代は物理経済による他者との差別化はすでに困難になっている。
戦後の、モノクロテレビを買える裕福な家庭が、貧しい家庭を招いてドヤ顔出来る時代ではない。
奨学金を返せないワーキングプアでさえ最新鋭のスマホを持ち歩く、そんな時代である。
必然、余剰な可処分所得を持つ者の、他者との差別化欲求は情報経済に移行する。
物理経済では困難な他者との差異を、お金で容易に購入する仕組み。
これこそがソーシャルゲームの本質なのである。