実行優先度評価のワナ(1):合理的評価方法に潜む、ステルス的違和感

3640 電算株価


これまで自分は15年以上、社外、社内のコンサル的な仕事をしていた。

現状の課題を整理し、解決すべき課題の優先度を定め、課題解決に向けたアクションプランを練り、実施スケジュールに落としていく。


このように、コンサルティングの仕事は、クライアントの業種やビジネスモデルが違えど、一定のテンプレートに従って進む。

ここに、活きたデータマイニング手法を組み込んで、クライアントの感銘を引き出し満足度を高めるのが自分の仕事の真骨頂なのだが、それは本流ではない。


そのテンプレートの中に「施策実行優先度評価」というものがある。

文字通り、実行すべき施策の優先度を定め、優先度が高いと評価された施策から順次実行に移していく。


評価には“実行容易度”と“ビジネスインパクト”の2軸を用いる。

実行容易度とは、コスト、期間、既存プラクティスの有無、社内調整のしやすさ、などを指し、それらを総合的に評価してランク付けする。


ビジネスインパクトとは、売り上げ、利益、認知率、顧客関与レベル、コンバージョンレート、などを指し、こちらも総合評価の上ランク付けする。

この2軸を縦軸、横軸として洗い出されたすべての施策をマッピングすると、施策は大きく4つの象限に配置される。

1.実行が容易であり、ビジネスインパクトが大きい
2.実行が容易であるが、ビジネスインパクトが小さい
3.実行が難易であり、ビジネスインパクトが大きい
4.実行が難易であり、ビジネスインパクトが小さい

この4つの象限のうち、通常は“1から手をつけましょう”、という“合理的な”提案になり、提案の通った施策をブレイクダウンしていく。

そして、次フェーズで2と3を実行に移していくための絵だけ描いて、現場の仕事は美しく完了する。


役員への最終報告で一堂居並ぶお偉方をうならせ、仕事を依頼してくれた現場担当者は出世への確かな一歩を確信する。

報告終了後の打ち上げで、担当者とがっちり固い握手を交わし、極上の酒を酌み交わしつつ、お互いのよき未来を語り合う。


・・・こんなことを一部上場企業50社以上に施してきた過去を顧みるに、なんと罪深い仕事をしてきたのだろうかと思う。

サラリーマン脳で考えるこの実行優先度評価への違和感、読者は感じられるだろうか?