期待値にベットする投資家脳を実装するには?:自らの主観的価値関数を認識せよ



最近は投資家脳になったためか、数万、数十万の情報を買うことに躊躇がなくなった。

将来の収益期待値を想像し、リターンとの見合いでペイするなら躊躇せず買う。

値段ではなく、あくまでも費用対効果の高さを判断基準としている。


お米10kgの価値は人によってそれほど差がない。

獲得できる栄養素やカロリーは不変のため、大飯食らいと少食の人の間でも、価値の差はせいぜい2~3倍程度だろう。


だが、情報は受け手によって価値が数十倍、数百倍、状況によってはマイナスになることさえ珍しくない。

売り手にとっても買い手にとっても取り扱いが難しい商品だ。


苫米地流抽象化思考に倣い、主観的価値関数で考えてみよう。

xがシステムトレードの情報、yがお酒、zが宝石とする。

かかる係数が各々に対する価値の感じ方とした場合、自分の関数は下記のようになる。

f(x,y,z) = +10x+3y+0z ①

トレードにまったく興味のない、酒豪であれば、

f(x,y,z) = 0x+10y+1z ②

トレードに嫌悪感を持ち、宝石をこよなく愛する女性であれば、

f(x,y,z) = -10x+1y+10z ③

といった感じだろう。


売り手の視点では、ターゲットの関数のがいかなる形状かを考えなければならない。

システムトレードの情報を売るならば、当然多大な価値を感じてくれる①がターゲットとなる。

②や③はいかに上質なトレードの情報を提供しても、係数が0またはマイナスなのだから価値を感じてもらえず、ターゲットにはならないし、するべきではない。

ゆえに、本来であれば彼らはトレードの情報を買わないはずなのだ。


だが現実はそうではない。

やたらと長いセールスレターで見られる、1/1000秒単位で無駄に高速回転する申込期限カウンター、常夏のハワイに合成されたドヤ顔ヘッダー画像、登記簿謄本に記載のない会社経営者の推薦文、幸の薄そうなお客様の声、誰も聞いていないのにQ&A、そして小坂明子をも超越して連呼される“あなた”との問いかけ・・・。

これらに多くの人たちが嫌悪感を抱くのは、そこで手に入る情報にかかる係数がマイナスだからだ。


不思議なことに、本来係数がマイナスの人々が、魅入られたかのごとくそぞろ購入ボタンを押下する。

プロモーター達は、人間の心理を巧みに操作する術を駆使して、係数を瞬間的にプラスに変え一気に引き上げる。

f(x,y,z) = -10x+5y+5z ⇒ f(x,y,z) = +100x+5y+5z

冷静になって元の関数に戻ったとき、彼らは騙された!、詐欺だ!、集団訴訟だ!と、やり場のない怒りを2chにぶつける。


だが、情報の買い手の問題もまた大きい。

自分自身の主観的価値関数の形状をしっかりと認識していないから、チープな煽りで簡単に関数を変化させられ、不要な情報を買わされ続ける。


主観的価値関数を認識できなければ、未来の不確実性を内包する期待値にベットするなどできようはずがない。

それがもし読者の現状なら、厳しいようだがシステムトレーダーとしての大成はない。


雑念を振り払い自分の胸に問いかけよう。

いったい今の自分は何を大切にし、何をもって生きがいを感じ、いかなるときに細胞が沸き立つ瞬間を迎えるのか。

己のクリアな主観的価値関数を規定する。

主観ゆえ、誰も決めてはくれない。

自分で決めるしかないのだ。

読者が真のシステムトレーダーを目指すなら、必ず備えなければならない要件だぜ。