他者からの期待という麻薬:満たしている欲求は己のものか他者のものか問う



「マズローの欲求5段階説」の第4段階に“尊厳の欲求”、または“承認の欲求”と呼ばれるものがある。

自分が集団から価値ある存在と認められ、尊重されることを求める欲求である。


人間は社会的生き物であるから、所属する集団からの承認を得たいと思うのは自然の成り行きだろう。


自分がサラリーマンをしていた時分、コミュ障ゆえにだろう、他の誰よりもその欲求が強かったと思う。

所属する部署においてクリティカルな課題とは何かを考え、自分のオリジナリティのあるスキルを切り口とした解決策を一点突破で提案、実行に移す。

右から左に業務を流すだけに同僚に対して、目に見えて高いパフォーマンスを発揮するため、賞賛の声や表彰を受けることも少なくなかった。


だが、その賞賛がもたらす喜びは、うたかたのごとく一瞬で消える。

持続性のある心の芯からの充足を与えてくれない。

人間の根源的欲求である承認の欲求を追求しながら充足しない原因が、最近まで理解できなかった。


思うに、会社や他人からの期待とは、自己の内的な欲求から来るものではないからではないだろうか。

会社の売り上げ向上や上司の出世など、彼らの欲求の充足が先にあり、その実現のために自分に期待し行動を促す。


自分に限らず、現代は誰しも寂しい。

だから、他者からの期待はこの上なく嬉しいし、その期待に応えたいと思う。


だが、所詮は他者の欲求。

自分の根源的な欲求は満たされようもない。


他人の期待に応えて一瞬の喜びを得、その一瞬を得たいがため、心身はズタボロなのに、さらに他人の期待に応えたいと思う無限ループ。

中途半端に優秀な人材は、この巧妙な心理トリックを用いた組織マネジメントによって承認麻薬の中毒者に仕上げられる。


他者「お前、この仕事やれるよな?」

自分「そうですねぇ・・・。(あんまやりたくねーな・・・)」

他者「みんなお前に期待しているぜ?」

自分「ちょっと考えてもいいですか?(断る理由を考えよう・・・)」

他者「SAY?」

自分「YES・・・」

まさにシャブ&リーマン


読者が今取り組んでいる業務は、本当に自分の内なる根源的な欲求なのか。

心身が悲鳴を上げているのなら、残念ながらその可能性はゼロだ。


具体的な解決策を提示できなく申し訳ないが、それでも己の根源的欲求を問い続けることは止めてはならない。

問いを止めなければ出口は必ずいつか見つかる。

信じて問い続けよう。