シストレ2.0時代における個人トレーダーの人心掌握術(3):脱サラトレーダーの壁


釈迦はあらゆる対象との関係性におけるウェイトを一定に置いた。

いかなる対象を釈迦にインプットしても、その評価関数から出力される値は常に同じ。

自分の子供も他人の子供も、カラスもゴキブリもノロウィルスもすべてをいつくしむ。

これを「悟り」と呼ぶ。


我々にはなかなかに理解しがたい境地である。

さすがに自分の配偶者とゴキブリを等しく評価しようとは思わないが、自分を認めてくれ、関わりを持つ人達ならば、なんとかして等値評価を目指したいところ。


専業トレーダーの場合、ウェイト以前に関係性の構築自体が非常に困難だ。

通常の事業は、ひとりですべてが完結することはまずない。

顧客や取引先を含めたステークホルダーとの関係性をもって、堅牢な収益化システムを共に構築していく。


そして、相互に有益な関係には高いウェイトを、そうでない関係には低いウェイトを置く。

このようにして社会は、アメーバのごとく動的に絶妙なバランスを維持している。


そのバランス維持の関係性の中に、ひとりで完結する個人トレード業は入り込みづらい。

チャットやスカイプで情報を交換するだけでは、他者から自分へのウェイトを感じ得ない。

この関係性の重み付けの希薄さこそ、脱サラトレーダーが最初に超えるべき高き壁となる。


ひとつの方策としては、ヘッジファンドを設立し、高いスキルを持つ者同士が同じ目的を共有して切磋琢磨することだろう。

運用効率の最大化という目的変数を共有し、自己の成長と強固な関係性の両取りが出来る夢のような環境だ。


だがこの環境の実現には様々なハードルが立ちはだかる。

日本の法的な縛りも大きいが、なにより先導者には高度なマネジメント能力が求められる。


運用資金の増殖は、社会の公器としていかなる役割を担うのか。

錦の御旗を掲げづらいこの業に仲間を誘引し続けるのは、通常の事業よりもはるかに高いマネジメント能力が必要だ。


個々人が自分の能力だけで十分稼げるのだから、組織に属する意味を常に与え続けなければならない。

わずかにバランスを崩すだけで簡単に組織崩壊を起こすだろう。


そもそもサラリーマンからドロップアウトした自分のような人種は、その能力がないからこそ会社から逃げ出したのだ。

うーむ、トートロジーのごとき袋小路にはまってしまった。


そこで、マネジメント能力検定10級の自分から「個人メディア構築」の提案となる。