労働市場のレジームを感知しスイッチする:現代の労働者のあるべき立ち回り方(4)

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ビジネスの本質をつかめば、KPI向上のための方向性も定まるため、提案資料に盛り込む要素はすべて決まる。

このときだけは集中して資料を作り込み、所属プロジェクトのプロデューサーに概要を説明する。

了承を得た後、約50人のプロジェクトメンバーにプレゼンを実施した。


何度も言うように、価値の大きさは他者との差異によって生み出される。

良質なゲームを作成するためのデザインやプログラムのスキルを一心に磨いてきたメンバーにとって、「顧客態度形成フローフレーワーク」や「実行施策優先度評価のためのマルチファクターモデル」、「ビジネスインパクト計測のためのテスト設計」などの、生まれて一度も触れたことのない概念に、斬新さと目が覚める驚きを感じたに違いない。


見たことがないわけだから、計測不能な価値をわずか1時間のプレゼンで、彼らの体細胞に叩き込める。

それでいてきちんと各施策とそれに絡むメンバーの役割も明確にし、かつ何のためにその業務を行うかをクリアに説明する。


コンシューマーゲームと違い、ソーシャルゲームはエンドレスの作業になるため、いつしか彼らは自分の業務の意味、目的を見失う。

その悩みに対するソリューションとしてのデータドリブンアプリ運営メソッドなのだ。

響かないわけがない。


かつ、優秀な彼らはまた、好奇心も旺盛だ。

プレゼン後、近寄りがたいオーラを放つ自分を囲んで、様々な質問を投げかけてくれる。

特に20代の若者の目の輝きは半端ない。

サラリーマンとして仕事のやりがいを感じる数少ない瞬間だった。


あとは個別の仕様書を作成してシステムやデザインのディレクターに引き渡す。

労働集約的な仕事は初回の提案のみで、以降の主要業務は週一のPDCAサイクルのチェックのみ。


KPIをしっかり見える化してあるため、施策による売り上げの増分もプロジェクト内、ひいては経営層まで響き渡るという仕掛け。

部署内ブルーオーシャン戦略は入社1ヶ月で完了し、唯一無二、No.1の居場所を作り上げ、堂々定時帰宅の権利を手にした。