高度な数理モデル用い開発された金融工学の歴史を叙述した本

「ウォール街の物理学者」の概要。

「エドワード・ソープ」という人名だけ引っかかったので、ちょっと書く。


「続・マーケットの魔術師」は、システムトレーダーとしても興味深く読めた本だが、その中でも「エドワード・ソープ」の章は興味深かった。

そこに、我々情報工学系の研究に取り組んでいた者からすれば神ともいえる「クロード・シャノン」が出てくる。

彼とソープが一緒にルーレットの研究をして、さまざまな街のカジノを子供がはしゃぐように荒らしまわっていたという記述は、私には「天皇の人間宣言」以上に衝撃だった。

データマイニングの技術をシステムトレードの世界に応用するとき、肩の力を抜いて、子供のように戯れる心を忘れずにいたい。


そして、何よりデータサイエンティストの私をうならせたのはソープの下記の名言。

「私の考えは、戦略ファクターを中立にすることだった。私たちはポートフォリオの主成分分析をして、主要なファクターをニュートラルにしようとした。」

既存のファクターを独立した少数のファクターに縮約する主成分分析。

最終的には第一主成分がベータになるという当たり前の結果から得られる示唆は計り知れない。

多くのデータサイエンティストは第一主成分を最も重視し解釈するが、相場の世界では、むしろ負荷量の小さな第二主成分以下が収益ドライバになりうるということ。

ペンディングになっている題材だが再度興味がわいてきたので、改めて分析を行いソープの思想に迫ってみたい。