「源流(オリジナル)」になる意味を今一度考えてみよう。
今ある単一スキルそのものをいかに精錬させようと、残念ながら上には上がいる。
努力の回帰直線上に外挿しえない、神に選ばれし人材というのはいつの時代にもいるものだ。
いかに困窮し、日の目を見る日が訪れなくとも、その対象を突き詰める日々に最高の喜び、生き甲斐を感じるのであれば、それもひとつの選択肢だろう。
だが、人間、貧すれば鈍する。
貧しさは賢者を愚者に変え、精気を日々の糧を得る作業に吸い取られてしまう。
それがいやなら、富を生み出す仕組みに自らのスキルを組み込むことを深く考える必要がある。
世にあるほとんどのオリジナルな商品は、要素分解していくと、誰もが生み出せる単一要素の組み合わせであることがわかるだろう。
オリジナルとはその要素自体が持つものではなく、組み合わせの妙によってもたらさせるものなのだ。
したがって、プログラマーもデザイナーも、その卓越したスキルを捨て去る必要はない。
質の高い要素として活用すればいい。
あとは手持ちのスキルを何と組み合わせるかをひたすら考えてみるのだ。
自分の場合、データマイニングのスキルを持って社会に出た。
一応田舎ながらそれなりの大学の大学院を修了したので、自信はあった。
しかし、この科学立国日本には、自分を遙かに凌駕する定量分析技術を持つ人間がごまんといることに、上京して思い知らされる。
かつてデータを一瞬俯瞰しただけで分析すべきポイントが浮かび上がって見えるという女性に出会った。
彼女の語りには、高僧の説法のごとき凄みがあり、対峙するだけで酌み交わす上善がグラスからこぼれ落ちるほどだった。
仲良くなった彼女と雀卓を囲むときは、常にアカギと戦っている感覚に陥った。
手にある14牌どれを切っても振り込みそうな、裸単騎待ちに魔法をかけられているような、振り込めば血液を抜かれてしまいそうな、そんな感覚・・・!!
精算時、レートがテンピンでよかったと胸をなで下ろし、彼女のデカピン倍プッシュの提案を振り切り、ざわつく鼓動を押さえ雀荘を後にした。
それ以降、この領域で戦っても勝ち目はないと悟った。
データマイニングに固執すれば、一生地を這う生き方を強要されるだろうと。
そして戦いの領域を変えようと決意する。