戦う領域を見極める(5):組織のエアポケットを埋める人材を目指して

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当時働いていたネットベンチャーは、これまで在籍した7社の中で、最もエネルギッシュで異彩を放っていた。

ちょうどネットバブルが崩壊した時期ではあったが、まだ“一発やってやろう!”と考えるギラギラした人間が多数在籍していた。


アンダーセンの切れ者コンサルタントから築地のマグロ卸し業者まで、バラエティーにも富む。

とはいえ、バブル崩壊の煽りを受け業績は悪化の一途をたどっており、なかなかパフォーマンスの出せなかった自分は、社長のクビリストの上位ランカーと噂されていた。


自分の居場所を確保しなければならない窮地に陥ったため、この組織のエアポケットたるスキルは何かと必死に考えた。

仮説として、それは“定量データを真に有効活用して、実運用における実効性を持つ施策の提案スキル”ではないかと考えた。


たしかにアンダーセンやKPMG出身のコンサルタントは、ドキュメントの中に無数の数字やグラフを織り交ぜ納得感のある提案をしている。

色彩、陰影、配置やフォントまでをこだわり抜き、その資料自体がひとつのアートとさえ見まごうほどだ。


だが、そこにちりばめられたデータは、その場のクライアントの納得感は引き出せるが、その後のマーケティング戦略の実運用には全くといっていいほど役に立たない。

文字通り、絵に描いた餅なのだ。


我々外部業者はプロジェクト終了までを凌ぎきればいいが、提案された側は、そこで決められたタスクを日々運用していかなければならない。

彼らが真に望む提案は、実際の運用において施策の効果を数値で実感できるスキームのはず。

それが仕事のやりがいにつながり、組織を推進する原動力になるのだから。


戦いの領域は決まった。

手持ちのデータマイニングスキルに、WEBマーケティング戦略構築の知識を掛け合わせ、この組織で唯一無二の人材になる。


結果、自分の提案は運用フェーズへ向けた次の仕事を引き出し、会社の業績向上に貢献、めでたく社長のクビリストから姿を消すのだった。