川田組長からシステムトレーダーへの至言:今一時の気持ちを薄める確率的思考法

地場証券プロディーラーとの対談

ニコニコ動画で「アカギ」が無料放送されていると聞きつけ、諸々作業の溜まっている中、深夜一気に視聴してしまった。


卓越した記憶力と確率・期待値の思考を武器として戦うニセアカギが、浦部の豪腕麻雀に押されているシーンでの川田組長の言葉。

“確率は10回回ってくる打席で3回ヒットを打てばいいという考え。時間をどんどんうすくしていく。10回のうち3回と考え、100回のうち33回と考える…ただ今一時…この一回という集中力がない…本人にそんな気はなくとも結果的に「機会」を安く扱っている。必死さがない。その機会成就に命を削っていない。それじゃあダメさ…”


自分は言わずもがな、確率・期待値による裏付けを絶対的な強みとして収益を得るシステムトレーダーである。

去年、日経225先物から株式トレードへ移行し、必然的に多数の銘柄への分散投資スタイルへ変化した。


個別銘柄が宿命的に抱え込む固有のアルファリスクを軽減するには、多数の銘柄にベットしてその影響を軽減するのがセオリーだ。

ひとつの銘柄で多少のミスを犯しても、全体としてはイベントからのエッジ分の収益にそれほどの影響を与えない。


また、監視銘柄数は常時50~100銘柄に及ぶため、1銘柄の分析にかけられる時間も限られる。

必要最低限の調査を実施した後は、チャートの形状で強弱を測って次々に仕掛けていく。

とにかく多数の銘柄に分散し、イベントのエッジのみを浮き上がらせることに心血を注ぐ。


今、川田組長の言葉を聞いたとき、日経平均のみに全神経を集中させていたあの頃の“今一時”の気持ちを忘れかけていないだろうかと反芻してしまった。


単一イベントに属す10銘柄の内5銘柄に仕掛け、5つのイベント合わせて50銘柄の内25銘柄でポートフォリオを組成する。

とりあえず15銘柄で利益が出ればよし。

想定外のおかしな挙動を示した少数の銘柄は損切って終わり。

別の新鮮な銘柄にサッサと入れ替える。

インデックスでヘッジをかけているので、多少の下げでもたいした恐怖は感じない。

夜もぐっすり眠れるので、安心して日々を過ごすことができる。


・・・自分は今、己を飛躍的に成長させてくれる「機会」を安く扱っていないだろうか?

いや、それ以前にその「機会」と向き合うのが怖くて見て見ぬ振りをしていないだろうか?


異常な挙動を示して暴落した銘柄の、その今一時にこそ多分に機会が含まれているのに、視界から遠ざけている。

とりあえずエッジがありそうな銘柄をどんどんリストに登録し、この銘柄一点に向けた集中力を薄めている。


利益はあくまでも評価指標のひとつに過ぎない。

自分を高めていく道程を真に楽しめる思考と技術を獲得するのが最重要評価指標なのだ。


機会成就に命を削る気迫。

せっかく光明が見えたところで、わざわざ暗闇の中に突入してしまいそうだが、ここは深く考えねばならん。

昭和39年の今一時は現在のレートでは今十時、などということにならぬよう・・・。