複雑な事象を整理する思考ツールであるフレームワーク。
最近はコンサルタントだけでなく普通のサラリーマンでも、アイデアを整理し提案書に落とし込む際によく使われるようになった。
公知となった過去から現在までのファクトを集めて、適切な軸で並べて評価する。
このファクトパックを前提として、自分が通したい提案を論理的に展開していく。
すでに軌道に乗った事業の改善提案であれば、フレームワークは非常に有効なツールだ。
過去の積み上げによって発生したひずみを修正し、より効率的に、より低コストで事業を運営していける。
しかし、プロダクトライフサイクルの早い現代、求められるのは他社との圧倒的差別性を持ったプロダクトを生み出すことだ。
このとき、フレームワークは様々な弊害をもたらす。
まず、過去に最適化された評価軸によって新たなプロダクトを評価してしまうこと。
機能的価値に重きを置いた評価軸で、情緒的価値の高いプロダクトを評価するのはナンセンスだ。
また、そもそもきれいに整理できている時点で、適切に競合評価されるわけで、したがってすでにその市場はレッドオーシャンだといえる。
複雑でカオスな状態にあるからこそ、誰の手垢も付いていないブルーオーシャンが存在するのだ。
我々が頼むトレードシステムは、非常にクリアな評価軸で優位性を認識できる。
リターン、勝率、プロフィットファクター、損益レシオ、エクイティーカーブのなめらかさ、最大ドローダウン・・・。
しかし、その聖杯システムは既に公知となっている。
データソースが同じであれば、生成されるシステムもまた同質となるのは必然。
だから洗練されたシステムトレーダーこそ、複雑でカオスな世界をのぞき見なければならない。
一般的なフレームワークで捉えきれない事象を、自分の固有性を持ったフレームワークで捉え直すのだ。
岡本太郎はいう。
“人生は積み重ねだと誰でも思っているようだ。僕は逆に、積み減らすべきだと思う。財産も知識も、蓄えれば蓄えるほど、かえって人間は自在さを失ってしまう。過去の蓄積にこだわると、いつの間にか堆積物に埋もれて身動きができなくなる。”
自分はすでに、これまで積み上げたキャリアを完全に捨てた。
そして今後、既存の思考の枠組みも捨てていく。
その先に再構築される自分はいったい何者になるのだろうか。
楽しみは尽きない。