インデックスファンドのような大口機関投資家が証券会社を通じて注文を出す際に使われる取引方法のひとつとして、「引値ギャランティー取引」がある。


これは、あらかじめ双方で契約した銘柄、数量を決められた日の引け値で引き渡す取引。

インデックスファンドはトラッキングエラーをゼロにでき、証券会社は手数料をもらえるので、一見Win&Winの取引に見える。


ここである銘柄を10万株、その日の引け値で引き渡す契約を結んだとしよう。

寄りから1,000円前後で推移していた対象株を、証券会社は前場で5万株程度をコツコツ買い続ける。

残り5万株を引け間際数秒で一気に買い上げ、1,050円で引けたとする。


簡単のため、前場5万株の平均買い付け単価を1,000円、後場5万株の平均買い付け単価を1,030円とすると、証券会社の平均買い付け単価は、(1,000円×5万+1,030円×5万)÷10万=1,015円となる。


証券会社は1,015円で仕入れたこの10万株を、契約通り1,050円でインデックスファンドに引き渡す。

すると、(1,050円-1,015円)×10万=350万円が、手数料とは別に証券会社の懐に流れ込む。


昔から行われてきた証券会社のお小遣い稼ぎで、インデックスファンドも当然認知している。

だが、彼らが恐れるのは絶対リターンの減少よりもトラッキングエラーという悲しい宿命を持つ。

かつ、インデックスファンドの収益源は出資者からの信託報酬や手数料なので、実は信託財産が目減りしてもさほど痛みは感じない。


では誰がLoserなのかというと、当然その出資者である。

インデックスファンドの信託財産の原資は主に年金や退職金、つまり最大のLoserはサラリーマンということになる。


かつて自分がサラリーマンだったころ、確定拠出年金の説明会があった。

自分はそんな官民が結託した詐欺に騙されるつもりはなかったので、パンフレットをそのままゴミ箱に捨てたのだが、同僚達は興味深げに聞き入っていた。

あまりに不憫だったので、上記の説明をして思いとどまらせたのだが、正確には理解していなかったようなので、彼らが現在どうしているかはわからない。


無知、ただそれだけで懲罰的な扱いを受けるのがこの資本主義社会。

社会に食い物にされたくなければ、自分の知らない知識は常にあると知り、決して概念拡張の流れを止めてはならない。