どこかの父さん系、兄貴系の既視感を覚える書籍。

教えを乞う側を読者に投影させることで関与レベルを引き上げる心理手法を採用。

その流れでネズミ系の話が差し込まれており注意が必要だが、そこだけ気をつけて読めば有用な示唆がある。


「相手に与えたサービスの量=報酬」の図式は、当たり前といえば当たり前なのだが、今の自分には響いた。


貨幣の本質は何か?

マルクス以前から議論されつくした深遠なる問い。


「資本論」では“人間労働”とされるが、いまいちしっくりこない。

現代で解釈される「信用」の方が、自分の行動原理に落とし込む上で腑に落ちる。


金融工学やIT技術の発達により創造される信用は実体経済をはるかに超える。

それと同時に、信用という言葉のぬくもりが消えてしまったのも事実。


そこはとりあえず割り切るとして、中期的な目標である富豪を目指す場合、この書籍にあるように、先に多くの信用を貯めなければならない。

蓄積した信用をマネタイズすることで貨幣が生まれるからだ。


多くの人間は大した信用もないままにマネタイズエンジンのみを追いかける。

我々の領域でいえば、手軽に大もうけできるトレードシステムだ。

結果、信用が干からび、最後は自分自身も干からびる。


この書籍では、お金のことを考えないことが富豪への道と説く。

とんちのような話だが、上記の“信用→マネタイズ→貨幣”の流れを理解するとわかりやすい。


手持ち資金の増減ではなく、蓄積した信用の増減に注意を払う。

そして、信用蓄積を目的変数とした、自分なりの行動原理を確立するのだ。


お金がなくとも信用は誰でも蓄積できる。

しかも貨幣と違い非課税。


読者が慢性的金欠にあえいでいるのであれば、富を獲得する行動原理が間違っている可能性が高い。

今朝も通勤電車で、自分の前に無理やり割り込んで鬼の形相で席を取る中年男性がいた。

今回の仮説を支持するならば、彼は一生富を獲得できないだろう。


読者よ、是非マネタイズをあせらず、電車でおばあちゃんに席を譲る、そんな手軽なところからコツコツと信用を貯めてみてはいかがかな。