「ドルコスト平均法」とは、定額購入法とも呼ばれ、均等な資金で株や投資信託を継続的に買い続ける売買手法である。
安い時に多く、高い時に少なく買い付けるため、同一の口数を買い付ける場合よりも平均単価は常に低くなることが知られている。
顧客をこの論法で納得させると、継続的な購入が見込まれるため、しばしば投資信託を勧める際の営業トークに使われる。
さらにインデックス投資の優位性や、日本の財政状況の悪化に伴う将来の不安などをコンボで説かれると、投資リテラシの低い人達は簡単に口説き落されてしまうのかもしれない。
この投資法に対するネガティブな反応を調べてみた。
「同一口数を買い付ける方法との比較は無意味」
有利、不利を語るには比較対象が必要だ。
たしかに、同一口数を買い付ける方法と比較する意味か何なのか、突き詰めると本質的に何の意味もないことに気付く。
せいぜい、普通のサラリーマンの給与は一定であるため、毎月の積立に使える金額も一定だろうから都合がよいことくらいか。
販売会社の安定した販売額にとっての都合が。
自分はマーケティングのコンサルティング業務も請け負っているので、仕事柄この比較に既視感を覚えた。
こんな話がある。
ある女性がブティックに何気なく入り、Aという洋服を手にした。
すかさず店員が別のBという洋服を手に寄ってきて、AのよさとBのよさを語りだし、様々な軸で比較してみせる。
女性もAとBを見比べ、Aの方がデザインは好きだが、Bの方が色味がよい、などと店員と協調したかのように考え始める。
そしていつの間にか気に入った方の洋服を買ってしまった。
ここでの女性の心理変化は、最初“商品を買う、買わない”の2択だったものが、店員のBの提案によって、“Aを買うか、Bを買うか”の2択にすり替わったのだ。
アマゾンドットコムの協調フィルタリングを用いたレコメンドエンジンは、クロスセルによる顧客単価向上が目的だと考えられている。
しかし実は、上記のような選択の変化による逸失機会の最小化も同時に実現してることはあまり知られていない。
読者が店員の巧みな心理操作に踊らされ不要な買い物をしてしまうようであれば、次からはこの話を思い出し、誇りあるトレーダーの頭脳に切り替えて敢然と立ち向かうべし。