最初に“面接とは何か”を自分なりに定義してみた。
面接とは“自分を売り込む場である”。
これまでもこの発想で結果が出ていたし、いかに人材としての価値をアピールできるかがカギだと考えていた。
それをより効果的にするため、自分は常に提案書を作って面接に挑む。
自分を売り込むのに、志望動機や退職理由など、通り一遍の質問に答えるだけでは、競合する他の志願者から抜きんでることは難しいからだ。
面接に際しては、機先を制して提案書を出す、場合によっては事前にエージェント経由で提案書を送付してもらい、目を通してもらうなどした。
まずは直近の経験が活きるゲーム業界を中心に当たって、結果が出なければWEBサービスの企業へと範囲を広げていく形で予定を組む。
書類もポツポツ通りだし、ベンチャーから名の通った企業まで、面接の機会があればとにかくすべて受けるようにした。
面接の場合、商品を売り込むセールスとは違い、今後一緒に働く可能性のある人が出てくる。
よって、極端な圧迫面接や嫌みな質問などはあまりない。
基本的には終始穏やかな空気の中で話は進む。
だが、それゆえに思わず気が緩んでしまうこともあるため、しっかりと気を引き締めて挑まなければならない。
最初は100人規模のベンチャー、続いて大企業の子会社と立て続けに一次面接を受ける。
提案資料をベースに、論理的かつ情熱を込めて自分をひたすら売り込む。
1時間があっという間に過ぎ、帰り道では常にやりきった充実感と手応えを感じていた。
しかし、エージェントからの返答はどちらも“お見送り”だった。
基本的に落選の場合はメールで「選考結果のご報告」というタイトルでメールが来るので、内容を確認するまでもなく落ちたとわかる。
受かった場合は、直接エージェントから鼻息の荒い電話がかかってくるので、スマホのメール着信イコール落選なのだ。
また、落選理由がメールに書かれてあるのだが、ほとんどの企業は“弊社が求める人物像と若干異なったため”などのテンプレのコピペが送られてくる。
したがって、何が悪かったのか、どう改善すればよいのかがわからない。
最大手のエージェントのマイページには、応募者数が閲覧できる機能がある。
後者は名の通った企業であるため特に応募者数が多く、1人の求人に対してその時点で54人の応募があった。
他のエージェント経由の応募者を加えれば、ゆうに100人は超える。
つまり、その100人の中で1番になる必要があるのだ。
“ま、この人数であれば、自分より優秀で担当者と波長の合う人がいてもおかしくはないか”
と、そのときは自分を納得させていた。
しかし、である。
その後3社、4社、5社、6社と、一次面接が全く通らない!
さすがに人数だけの問題ではないと気がつく。
しかし、どの会社も本当の落選理由を教えてくれないため対策の打ちようがない。
書類落ちはまだ自分という人間を知られていないので、自分にいいわけが出来る。
しかし、面接落ちは期待を持って会ってもらったのに人間の質が悪いと言われているに等しい。
これが続けば、さすがにどんな人間でも気持ちが萎える。
原因もわからないため混乱をきたし、体から吹き出物がここかしこに出来、巨大な口内炎まで出てきた。
そんなタイミングで、最も行きたかった大本命企業の一次面接を迎えることとなった・・・。