02.ギャンブルにおける興奮の本質
ギャンブルにおいて、人は何を求め何を楽しみとしているかを知るために、いくつかのギャンブルにおける人々の行動の類似的傾向を考えていきましょう。
まずはパチンコですが、人気機種である“花の慶次”や“北斗の拳”、“GARO”などは、作りこみがしっかりしていることもありますが、最大のウリは“連荘確率の高さ”であり、関連雑誌や店頭でも“継続率80%!!”といった表現が前面に出ています。
パチンコの基本的な話をしますと、台の回収率を一定とした場合、連荘確率の高い台は初当たり確率が低く、逆の場合は初当たり確率が高いように設定されています。すなわち、上記の機種は“一発あたればでかいが、当たるまでに大金をつぎ込まなければならない”傾向があるのです。
また競馬でも、第三期の授業の教材とした下記の馬券形式における投票数の違いに、その傾向が見てとれます。

回収率でいえば、単勝馬券と複勝馬券は5%の特別給付金がついているので、他の馬券よりも期待値基準においては有利なのですが、馬券の売り上げは相対的に低い傾向にあります。
加えて、オッズが高いとさらに期待値は下がる(これは意外と知らない人が多い)にもかかわらず、オッズの最も高い馬券が存在する三連単のが最も売れているという逆相関の関係にあります。
もちろん基本期待値が負の場合、払い戻し金の分散の大きさを活かすために三連単を狙う手はありなのですが、おそらくオッズの高いこれらの馬券を買っている人の大半はそういった原理を考慮しているのではなく、単に“大勝したい”という本能的な欲求に基づいて行動していると推察されます。
さらに麻雀でも、8種8牌から国士無双を狙ったり、親がリーチをかけているのに明カンでドラを増やしたりする無茶な友人もいました。当然のことながら彼は我々と麻雀をやったトータルでは負けているのですが、それでいていつもニコニコして楽しそうに卓を囲んでいたのが印象的でした。
最後にギャンブルではないですが、一時期とある家電量販店で“100人に1人お買い物代金無料!”というキャンペーンをやっていました。100人に数百円値引きするのと同じコスト負担でありながら、そうったポイントアップキャンペーンよりも売り上げが伸びたという報告があります。これも顧客の効用関数の非対称性をうまく利用したマーケティング施策といえます。
さて、このようにギャンブル全般をつぶさに観察してみますと“一発大きな当たりを引くことが可能な賭け方をすることよって心理的効用(楽しみ、興奮の度合い)を最大化する”という顧客行動の類似傾向を見出すことができると思います。 つまり、ギャンブルを楽しむためには”いかに損益の変動を大きくするか”がポイントとなってきそうです。