稲を育てて雑草を刈り取る:畳水練トレーダーには理解できない本質的アナロジー

立花義正 あなたも株のプロになれる

最近は質の高いブログ記事を書いているトレーダーが増えてきた。

相場の本質を知る表現者として彼らが表に出てきてくれたことは、自分のスキルアップにも寄与するため、大変ありがたいことだ。


惜しむらくはコンテンツの要諦を存分に押さえ切れていないところなので、是非このブログを読んでくれている方がいればHITPへ是非!


自分はコンテンツマーケター兼専業トレーダーなので、記事の質の高さとトレードスキルの両方を評価できる。

すると、自分の琴線に触れる記事を書いているトレーダーのトレードスキルは、確実に高いことがわかる。


確信を持って利益を出していないトレーダーの記事には、いくら偽装しても必ずほころびが出てくるし、整然としている文章であるが故に、そのほころびが特に目に付くのだ。


そんな中、先日ツイッターで流れてきたトレーダーのブログ記事は秀逸だった。

ひとつひとつが長文ながら、最初の記事からすべて目を通してしまった。


熟練した技術を持つ人間かどうかを簡単に見分けるポイントとして「例示の的確さ」がある。

本質的な事象を、誰もが直感的にイメージできるたとえで表現できているかどうか。

それでいて、本質を理解したものだけが腑に落ちる表現。


件のブログでいえば、トレードにおける玉操作を下記のように表現していた。

「稲を育てて雑草を刈り取る」


今自分が定性シナリオに依拠したスイング主体のトレードをやっていることもあり、これほど的確なたとえはないと、思わず膝を打ってしまった。


自分はまず、当日の上昇率ランキングからチャートの形状のよい銘柄を選び出す。

次にその銘柄のIRやニュースを時系列で遡り、株価が今後上昇するに足るシナリオの存在を確認する。

最後にゴールの日時を確認して、翌日試し玉を入れる。


その後の玉操作は、チャートが美しさを保っている間は鬼ホールドしつつ、押し目で増し玉、チャートが崩れる予兆が出たら全部投げる。

自分の源流が故林輝太郎氏(自分の師匠の師匠が林氏)なので、斥候の試し玉からの分割増し玉、玉維持を目的としたツナギと一括決済を今でも基本の型としている。


想定していたシナリオがゴールまで株価上昇に寄与し続ける割合は、体感として2割から3割。

すなわち、途中でダレるパターンがほとんどだということ。


この状況に直面したとき、頭でっかちのシステムトレーダーはより効果的なファクターを探す旅に出る。

4割、5割、6割の強烈なシナリオを求めての宝探しの旅は興味深く楽しいから。


しかし、彼は実践を通じた経験の蓄積こそがトレーダーのスキルを磨くと主張する。

泳ぎを覚えたければ、流体力学や畳水練に時間を割くのではなく、海パンをはいてプールに飛び込めと。


飛び込んで溺れかければ、手足をジタバタさせ、溺れる理由を考えるだろう。

その必死なる経験の蓄積があってこそのファクターモデルでありシナリオの組み立てなのだと。


「稲を育てて雑草を刈り取る」

このたとえは、実践を通じてのみ血肉となる、玉操作の本質中の本質を言い当てている。

この本質が理解できれば、ランダムエントリーでも利益になる。

エクセルVBAを使った全数検索では決して身につかない、相場の要諦なのだ。


もし長年トレードに携わりながら彼のたとえが腑に落ちていないのなら、残念ながらその年月は畳水練に費やされてきた可能性が高い。

本気で実践者として利益を出したいのなら、そろそろプールに飛び込まないと・・・。

冷たい水にその身を浸してこそわかる経験がそこにあり、その経験のみが読者を上達へと導くのだから。