強化すべきトレーディング要素の取捨選択基準:独立性を求める苦難を受け入れられるか

四季報CDROM冬号

トレードには学ぶべき要素が無数に存在する。

自分の有限の時間を、どの要素の強化に振り分けるかの見極めは重要である。


評価指標は当然リターンの額であり、安定性であろう。

その評価指標の最大化に向けて、いかなる要素を強化していくべきか。


まずは、自分の強みの有効活用を考える。

会計が得意ならファンダメンタルから優位性を導き出すだろうし、データマイニングが得意なら、高精度な数理モデルを構築する。

若くて反射神経に優れるなら板読み、建築家のような空間認識能力に自信があるならチャートリーディング、など。


スタートはそれでよい。

その方が結果が出やすいだろうし、自分の得意分野なら、人よりも努力を継続できるだろうから。


問題はその先である。

ひとつの要素を80点まで引き上げたとき、その後の労力を何に振り分けるか。


80点を90点、95点に引き上げる者もあるだろう。

もし、自分の強みがその領域で1000人に1人に入る自信と才覚あるなら、是非突き抜けてもらいたい。

あるいは、その領域を極めることが生き甲斐にさえ思えるのなら、そしてたとえ結果が出なくても後悔がないのなら、迷わずそうすべきだ。


だが、単純な効率を追い求めるなら、別の新しい要素に取り組んだ方がいい。

とはいえ、別の要素といっても無数にあるわけで、取捨選択の判断基準が欲しいところだ。


実はその判断基準は明確で、それは“80点まで到達した要素との独立性の高さ”である。

独立性が高ければ高いほど、80点まで到達した要素との掛け算の値が大きくなる。


底辺を既存の強み、新しい要素を斜辺とした四角形の面積で考えるとわかりやすい。

新しい要素を60点まで引き上げたとき、四角形の面積は、80×60sinθ。

sinθが最大の1となるのは90度、すなわち両要素が完全に独立となった場合に、評価指標は最大値の4800となる。


一方で、各要素が相互に従属性を持つ場合、たとえば各要素のなす角度が30度ならばsinθは0.5であるため、四角形の面積は2400と半減する。


つまり会計が得意なら、次に四季報の読み方に取り組むのではなく、テクニカル分析や組み合わせ最適化のためのプログラミングに取り組んだ方が、最終的な評価指標の値は大きくなるのだ。


とはいえ、人は自分の得意領域の外には出たがらない。

自分の得意領域でモノを語った方が説得力があり、自信を持ってドヤ顔できるし、なにより関わる人々からの賞賛を容易に得られる。


そこを敢えて、恥をかき傷を負いながら独立性を求めていけるかどうか。

選ぶのはもちろん読者次第。


けど、自分はガクブルしながら無知な寒空に出て行くけどね。